恋の微熱に溺れて…
覚悟を決めた。どんなに抵抗しても、一緒に入ることは変わらない。
だったら潔く一緒に入る方が早い。抵抗すればするほど、より恥ずかしさが増すだけだ。

「それならよかったです。早速、お風呂に入る準備を始めしょう」

慧くんはそう言ってから、すぐにお風呂に入る準備を始めた。
私はただ立ち尽くしながら、それを眺めていることしかできなかった。経験がないから、こういった時にどうしたらいいのか分からない。
それに対して、慧くんは慣れているのか、てきぱき動いている。
その慧くんの様子が、より私の心の不安を煽った。

「準備が整ったので、先に入って待ってますね」

“先に入って待ってます…”。今の私にはその一言がプレッシャーでしかなかった。
あまり待たせるわけにはいかない。待たせすぎてしまうと、慧くんが逆上せちゃう。
かと言って、ささっと準備を済ませて、慧くんが待っているお風呂場に入る勇気はまだない。
覚悟を決めたものの、いざ一緒に入ろうと思うと、まだ心の準備ができていないような気がしてきて。ここから逃げ出したい気持ちに駆られる。
必死に自分の気持ちを抑えている。さすがに逃げるわけにはいかない。だって先に入って待っている慧くんの元へと向かわなければならないから。
< 98 / 133 >

この作品をシェア

pagetop