激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「オレ、いじめには遭ってないけど高校でずっと孤立しててさ。つらかった。不登校になって高校をやめた」
「……うん」

「ゲームやって動画見て、そんな毎日だった。だけどVRアートを知ってさ。なんか自由でいいなあって。それから高卒認定をとって芸大に行った」
「頑張ったのね」
「うん、頑張った。頑張ったんだ」
 自分に言い聞かせるように、彼は重ねて言った。

 短い言葉の裏に、どれだけの努力があったのか。何年もの苦しみと努力の結果が彼の芸術を生み出し、結実したのだろう。

 自分はいったいどれほどの努力をしただろう。
 毎日を頑張ってきた。だが、一つの目標に向かっての努力ではないから、漫然と日々を過ごしてきたように思えてしまう。

「さっきのあいつらもさ。もっと大きくなったときに、壁にぶつかるかもしんない。そのときにVRが支えになるといいなあって」
「なるよ、きっと」

「だけどVRアートが金持ちの道楽で消費されるのが現実だよ。あいつらに認められても嬉しくないけど金持ちが買ってくれないと生活できないし、ジレンマ」

「金持ちイコールで悪でもないでしょ?」
「そうだけどさ。オレの作品を好きって人に愛されたい。投資目的なんて最悪って思う」

「私はあなたの作品が素敵だと思うよ」
「嬉しい」
 大晴が顔を上げてにこっと笑う。

 初めて見る屈託のない笑みに、紫緒の胸がどきっと鳴った。
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