激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 朝礼はいつもと違う雰囲気が漂っていて、居心地が悪かった。
 千暁、彩陽、嘉則がぴりぴりしている。
 理由はすぐにわかった。嘉則が朝礼の最後に言ったからだ。

「本日はみなさんにお願いがあります」
 言って、彼は全員を見回す。

「以前、彩陽はストーカーに遭いました。そのときの犯人は別件で捕まりましたが、今回また彩陽あてに不審な手紙が届きました。怪しい男をみかけたら、すぐ私たちに知らせてください。彩陽はしばらく裏方にまわります。ご迷惑をおかけすると思いますがご協力をお願いします」

 嘉則が頭を下げると、千暁と彩陽も頭を下げた。
 紫緒たちも頭を下げて応じた。

 ストーカーなんて。きっと彩陽さんは怖いだろうな。
 自分にできることはどんどんやって、協力しよう。
 紫緒は心にそう決めた。



 心に決めたのに。
 紫緒は目の前の惨事に盛大にため息をついた。

 御朱印を頼まれることもあるからと空いた時間に練習したのだが、子供の習字よりもひどいありさまだった。
 巫女装束に墨がつかなかっただけましだ。

「独創的ね」
 紫緒の字を見た紗苗が笑う。
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