激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
彩陽はしばらく仕事を休む、と朝礼でお知らせがあった。
紫緒は心配でたまらない。
ふと、天は自ら助くる者を助く、という言葉が蘇る。
でも、ストーカーなんて一人で対処できないよね。
もやもやしたものだけが胸に広がっていった。
三時ごろ、紫緒が拝殿で舞の練習をしているときだった。
前日にも見かけた丸刈りの男性が、紫緒を見ていた。
あのときの人みたいに巫女舞が珍しくて見ているのかな。
まったくもって落ち着かない。だが、夏祭りでは見られながら踊るのだから、これもまた練習だと思い直して舞う。
気が付くと男性はいなくなっていて、ホッとした。
仕事を終えて着替え、帰ろうとしたときだった。
また丸刈りの男を見かけ、紫緒はさすがに不審に思った。
少し迷ったのち、千暁に電話をかける。
「どうされましたか」
「今、不審な人がいて。何時間も境内にいるみたいで」
いったん帰ったにしても、何度も来る場所とは思えない。散歩のようでもないし、目的がわからない。
「すぐに行きます。紫緒さんはなにもせず、そこから動かないでください」
「はい」
紫緒は今いる場所を伝えて通話を切る。
直後、男とばちっと目が合った。
紫緒は慌てて目をそらす。