激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
警察が到着し、男はパトカーに乗せられた。
紫緒と千暁は事情を聞かれたのちに解放された。
神社の敷地内だったせいか、野次馬に囲まれずにすんだのが幸いだった。
「仮釈放中の再犯です。執行猶予はつかないでしょうね」
千暁が言い、紫緒は黙ってうなずいた。
「あの男は以前も姉につきまとっていました。同時にほかの女性にもストーキングをしていたんですよ」
「同時に……そんなことあるんですね」
千暁は頷く。
「その女性が結婚すると聞いて逆上し、女性を殺そうとしました」
紫緒は驚いて千暁を見る。
「幸い、女性は軽傷です。男は殺人未遂で逮捕され、実刑となりました。姉へのストーキングの証拠も見つかり、同時に起訴されました。そのときになぜか、姉が裏切ったと思い込んで恨みに思っていたようです」
どうしてそういう心理になるのか、紫緒にはまったく想像がつかない。
だが、それを理解できるなら自分もストーカー気質があることになってしまう気がする。
「昨日警察に問い合わせてわかったのですが、最近、出所したようです」
だから千暁は頭を抱えていたのか、と紫緒は納得した。
「それでこんなことをするなんて」
刑務所を出たらチャラとでも思っているのだろうか。
「怖がらせたくなかったのですが、今となってはお知らせしたほうが良かったと思っています。こんな危ない目に遭わせることになるなんて。申し訳ございません」
千暁に頭を下げられ、紫緒は慌てた。