激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「私こそ助けていただいて、ありがとうございます」
「なんとか間に合って良かったです。電話で言われた場所にいないとわかったときは焦りました」

「彩陽さんの場所を教えろと脅されて。なんとか家から引き離さないと、と思って」
「機転を利かせてくださったのですね」
 千暁は穏やかにそう答えた。

「でも結局私、お役に立てなくて」
「なぜそんなに自分を責めるのです?」

「助けて頂いてばかりで、なにも恩返し出来なくて」
「充分、助けていただきましたよ。さきほども私から男を遠ざけようとしましたよ」
 紫緒はぎゅっと拳を握った。

 それでも結局、自分一人ではなにもできなかった。あんな状況では当然かもしれないが、なんだか納得がいかない。

「無理をすることは頑張ることとは違うのですよ」
 紫緒は頷けない。無理をしてでも努力して、それでようやく人と同列なような気がしてしまう。

「毎晩遅くまで明かりがついています。遅くまで舞の練習をしているのではないですか? 上達が早いと姉が言っておりました」
「本当に!?」
 紫緒は千暁を見つめる。

「本当ですよ」
 紫緒は目を潤ませた。

 彼の言う通り、毎晩、練習をしていた。
 努力が認められたようで、胸が熱くなる。
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