激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 翌日の朝礼で、ストーカーが捕まったことが伝えられた。
「今日から彩陽が復帰します。みなさまよろしくお願い致します」
 嘉則と千暁と彩陽が頭を下げ、みなが頭を下げ返した。

「捕まってよかったですね」
 一緒に掃除に向かいながら、絵麻が言う。
「ほんとに」
 紫緒は短く答えた。自分がその場にいたことをみんなは知らない。千暁が見つけて通報したという説明になっていた。紫緒が騒がれないように配慮してくれたのだ。

「権宮司ってすごいですよねえ。古武術でしたっけ、あれも達人レベルらしいですよ」
 だからか、と紫緒は納得した。

 昨日、紫緒の目の前で千暁は一瞬でストーカーを倒していた。いつも木刀を振るっているから忘れていたが、古武術には体術もあると言っていた。

「私も強くなりたいです」
 ぼそり、と絵麻がつぶやく。
「私も。強いっていいですよね」

 紫緒はそう答えた。たいていの人は強くなりたいと思っているだろうし、だから絵麻がその言葉になにをこめているのか、まったく気が付かなかった。



 掃除を終えると、紫緒は紗苗と一緒に御祈祷の準備に向かった。
「今日の御祈祷、いわくつきの人形のお祓いなんだよ」
 びくっとした紫緒に、紗苗はにやにやと続ける。
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