激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない

 片付けを終えた紫緒は授与所に戻りながら、何度も彼の照れた笑顔を思い出していた。
 彼の穏やかな笑みはほっとする心地になるが、どこか遠い人のような――聖職者然とした距離を感じてしまう。

 だが、先ほどは、急に近く――もっと言うなら、彼が人間であるように思えた。

 ああ。
 紫緒は深くため息をついた。

 彼のことが、どんどん自分の中に深く刻まれていく。
 きっともう、引き返せないところまで。

 律と二人でいるときにもどきっとすることはあったし、大晴がかわいくて楽しかったりもした。ミカにいたっては抱きしめられたこともある。

 だが、千暁だけはなにかが違う。
 清流のような清らかさに、最初は憧れがあった。
 自分の窮地を次々と救ってくれた優しさに感謝して、役に立ちたいと思った。

 なのに。
 彼はみんなに優しいだけなのに。どんどん心は惹かれていった。

 照れた笑顔が、目に焼きついて離れない。
 あの笑顔を独占したい。
 ぎゅっと胸が痛くなった。

 どうしよう。紫緒は自分に動揺した。
 ファンにつきまとわれ、困っているという千暁。この気持ちを知られたら、自分まで同じように見られるかもしれない。

 なにより、恋愛感情なんて俗っぽいものを向けるなんて、なんだか彼を汚してしまう気がした。

 絶対に知られないようにしないと。
 そう思ったときだった。
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