激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
***
「というわけで、恋人を作らなくちゃいけないんです。でもそんなの無理で。レンタル彼氏も考えたんですけど絶対にバレるなあって。つい、神頼みに来ちゃいました」
紫緒は無理矢理笑って見せた。詠羅が撮っていた映像は社内で共有ファイルに上げられ、みんなに見られた。笑う人はおらず、むしろ同情の視線が注がれた。それもまたみじめだった。
神主は笑わなかった。
「つらい思いをされましたね」
そう言われると、今まで耐えていたものがぽきりと折れるような音がした。
紫緒はうつむく。
ぽつりと涙が落ちて、慌てて目を拭った。
「転職しようと思ってたところです。彼氏はいませんでしたって開き直って笑われてくることにします。別れたって言えばいいんですかね」
泣き笑いで言うと、神主は紫緒の想像もしなかったことを言った。
「彼氏、私がなりましょうか」
紫緒は目を丸くした。
「先ほどのお礼です」
「そんなの悪いです」
「任せてください」
神主は微笑していた。それが妙に頼もしい。誠実そうな黒い瞳がまっすぐに紫緒を見ている。
紫緒はどきっとして目をそらした。
彼は背が高く、そこらの芸能人よりも顔が整っている。詠羅の鼻をあかすことは充分にできるだろう。神主という仕事も特別感がある。