激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「私こそ彩陽さんにはいつもお世話になってますし、千暁さんに助けていただきました。本当にありがとうございます」

 昨夜、警察が帰ってから、千暁とともに朋代たちに説明した。
 彩陽は怖がっていて、ただ震えながら話を聞いているだけだった。

「彩陽はあまのじゃくだし、千暁は自分の心を隠してしまって。神社だからいろいろと普通と違ってしまったのかしら」
 本心を隠している、というのはなんだか合点がいった。だが、だからこそあの清流のような美しさもあるのだろう気がする。

「お二人ともとても素敵です」
「うれしいこと言ってくれるわね。私もストーカーのことで紫緒さんにお礼を言いに来たところだったのよ。本当にありがとう。そして息子をよろしくお願いしますね」
「はい」
 返事をしたものの、偽物なのに、と後ろ暗く思った。



 夕方、帰ろうとしたときだった。
 先に退勤した絵麻が、和久田優奈と一緒にいるのが見えた。

 絡まれてるのだろうか。
 紫緒は迷い、結局、そちらに歩いて行った。

「こんにちは。どうされましたか」
 絵麻は顔を歪めて紫緒を見た。
 優奈が紫緒を睨む。

「昔の同級生と話をしてるだけよ。ねえ」
 優奈が仲良さげに絵麻の肩に手を回した。その顔に浮かぶ笑みには邪気があり、絵麻の顔は暗い。旧交を温めているようには見えない。
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