激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「言い逃れが通用すると思っているのですか」
 千暁の声は厳しい。
「こんな女に結婚を申し込んだなんて嘘よね?」
 優奈が言う。

「本当ですよ」
「なんで!」
「愛しているからです」
 言われて、紫緒はかーっと顔が熱くなる。
 方便だとわかっているのに。なのに言葉として言われると妙に現実味を帯びて聞こえた。

「あなたを許せません。警察を呼びます」
「私を警察につきだすと絵麻が困るわよ」

「なんの関係が?」
「私の親友なの。怒って辞めちゃうかもね」

「かまいませんよ。彼女のほうが大切なので」
 千暁は平然と宣言する。

「私のバックには怖い人がついてるのよ!」
「ヤクザなら慣れてますよ。脅しですか?」
 千暁に動揺はまったくない。

「ヤクザより怖いんだから! 覚悟しなさいよ!」
 強がりなのか、優奈は重ねて叫ぶ。

「脅迫されました。紫緒さん、通報を」
 千暁が懐からスマホをだしてロックを解除し、紫緒に渡す。

 千暁は優奈を警戒していて、だから両手を開けておきたかったのだ。
 紫緒は迷う。
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