激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 一昨日も警察を呼んだばかりだ。それでまた警察を呼ぶなんて、ご近所に危ない神社だと思われてしまうのではないだろうか。

「今呼ぶかあとで呼ぶかだけの違いですよ」
 逡巡する紫緒を見透かしたように千暁が言う。
 紫緒は震える手で一一〇を押した。

「私はなにもしてないから!!」
 叫んで、彼女は逃げ出す。
 震える紫緒の手からスマホが滑り落ちる。

『はい、一一〇番です。事故ですか、事件ですか』
 スマホから、警察の通信指令センターの声が響く。

 千暁はスマホを拾い上げ、
「事件です」
 と告げた。

 紫緒の胸の中には、ぐちゃぐちゃと感情が渦巻き、どうしようもなく地面に座り込んでいた。



 警察が来て、紫緒と千暁は事情聴取を受けた。
 千暁の帰りが遅いのを心配して様子を見に来た朋代と美津子が、警察官の姿に驚く。
「なにがあったの!?」
 声をあげる朋代に、あとでね、と千暁は穏やかに告げる。

「よそのお嬢さんをまた事件に巻き込んで、また警察沙汰なんて!」
「大丈夫ですから」
 焦る朋代に、紫緒は言う。

「困ったことがあったら遠慮なくおっしゃってね。朋代さん、あとでゆっくり聞きましょう」
 美津子はそう言って、怒る朋代を連れて家へ戻っていく。
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