激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 警察が帰ると、千暁は紫緒に深く頭を下げた。
「私のせいですね。申し訳ありません」
「いえ。頭を上げてください」

「外の人間にはあなたと私がつきあっているということは話していません。母にも外部の人間には言わないように口止めしました。ですが、この家に住んでいるのは行動を見ていればわかっていしまいます。姉のストーカーの件もあったのに、私が迂闊でした」
「私も気を付けるべきでした」

「あなたは悪くないですよ」
 千暁は微笑して見せた。だが、それはどこか悲しく見えて、紫緒の胸が痛んだ。



 翌日の朝礼では神社に不審者が入ったことが伝えられた。
 それを聞いた絵麻は顔を青ざめさせた。

 友達が事件を起こしたとなると冷静ではいられないよね、と紫緒は心配して彼女を見た。
 もうなにも起きないと良いけど。
 紫緒はそう思いながら、仕事を続けた。

***

 紫緒の元勤め先のドリームパン工房の社長、永高英智と令嬢の詠羅が高天神社を訪れた。
 アポがとってあり、嘉則と千暁が社務所の応接室で出迎える。

「詠羅とこちらの千暁君との縁談について、お話があるのですが」
 英智が言い、嘉則は驚いて詠羅を見た。

 詠羅は傲然と笑みを浮かべて千暁を見ている。
 沈黙の下りた社務所に、クーラーの音だけが静かに響いていた。
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