激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「巫女舞っていいな。描いて見たくなる。雅楽も独特でいい」
 わくわくした様子の大晴に、紫緒は嬉しくなった。伝統芸能と最先端アートが融合したらどんなことになるだろう。

「私も準備に行くわ」
 言って、彩陽は出ていった。

 大晴の顔が急に険しくなり、紫緒はうろたえた。

「お前と神主、つきあってんのかよ」
「えっ……」
 この場面でそんなことを言われるとは思ってもみなかった。

「そうですよ」
 千暁が肯定し、紫緒は恥ずかしくてうつむいた。
「嘘だろ」
 大晴が言う。

 ミカにはすぐにバレたし、ここでも大晴に疑われる。
 そんなに彼と釣り合わないのか。
 思ってから、さらに恥ずかしくなって深くうつむく。

 それでがっかりするなんて、付き合いたいと思っている証拠じゃないのか。
 その上、神様の目の前で千暁に嘘をつかせてしまった。
 言霊という言葉もあるし、千暁を自分が穢している気がしてならない。

「紫緒さん、お疲れでしょう。あちらへ」
 千暁が言い、紫緒の背を押した。
 誘導されるように二人で拝殿を出て行く。

「待てよ!」
 追いかけようとした大晴の手を、律がつかんだ。
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