激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
普段は神主装束の彼が、軽装でハンバーガーを頬張るギャップに、胸がきゅんとなった。
ファンの人たちはこんな姿を見たことないよね。
優越感まで湧いて、じっと見てしまう。気づいた千暁が、ごくんと飲み込んでから紫緒に尋ねる。
「どうされました?」
「なんでもないです」
まるで本当の恋人同士みたいだ。実際にはまったく違うのに。
紫緒はポテトを口に入れた。塩気がきつくて、胸の奥までしょっぱくなった。
千暁が連れて行ってくれたのは、富士山の南側にある浅間大社だった。御祭神は木花佐久夜毘売命《このはなさくやひめのみこと》だ。
駐車場から赤い鳥居をくぐっていく。
楼門も赤く、本殿も赤かった。
「ここはお宮が赤いんですね」
「徳川家康公が寄進したと言われています。正面は入母屋造りで――」
言いかけて、千暁はやめた。
「すみません、つい。今日は普段のことは忘れて過ごしましょう」
彼にとっても事件続きだった。たまには日常を忘れたいのかもしれない。とはいえ、訪れているのが神社なのだが。
「わかりました」
紫緒が頷くと、千暁は笑みに目を細めた。
ファンの人たちはこんな姿を見たことないよね。
優越感まで湧いて、じっと見てしまう。気づいた千暁が、ごくんと飲み込んでから紫緒に尋ねる。
「どうされました?」
「なんでもないです」
まるで本当の恋人同士みたいだ。実際にはまったく違うのに。
紫緒はポテトを口に入れた。塩気がきつくて、胸の奥までしょっぱくなった。
千暁が連れて行ってくれたのは、富士山の南側にある浅間大社だった。御祭神は木花佐久夜毘売命《このはなさくやひめのみこと》だ。
駐車場から赤い鳥居をくぐっていく。
楼門も赤く、本殿も赤かった。
「ここはお宮が赤いんですね」
「徳川家康公が寄進したと言われています。正面は入母屋造りで――」
言いかけて、千暁はやめた。
「すみません、つい。今日は普段のことは忘れて過ごしましょう」
彼にとっても事件続きだった。たまには日常を忘れたいのかもしれない。とはいえ、訪れているのが神社なのだが。
「わかりました」
紫緒が頷くと、千暁は笑みに目を細めた。