激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない



 二人でお参りをすませ、境内を散策する。
「ここには珍しい物があるんですよ。見られるといいんですが」
 一緒に池にかかる赤い橋へと歩いて行く。

「ありました。よく池の中を見てください」
 見ると、緑の藻がたくさん繁殖していた。
 その中に、小さな白いなにかがある。
 いったん気が付くと、緑の茂みにたくさんのそれがふよふよと揺れているのが見えた。

「花!?」
梅花藻(ばいかも)ですよ。これをお見せしたくてお連れしました」
「水中の花なんて初めて見ました」
 紫緒はスマホで何枚も写真を撮る。が、光が反射してうまく撮影できない。

「水の綺麗なところで育ち、夏に梅に似た小さな花を咲かせます」
 清らかな流れと白い美しさに、紫緒は千暁を連想した。

「可憐でかわいらしくて、まるであなたのようだと思いました」
 千暁に言われ、紫緒は驚いて彼を見る。

「私は天社さんのようだって思いました」
「千暁ですよ。何度目でしょうね、これ。今日くらいは名前で呼んでいただけませんか?」
 名前で呼ぶなんて恥ずかしくて、ずっとできないままだった。

「……千暁さん」
「はい」
 千暁はうれしそうに答える。

 紫緒は気まずさと照れで水面を見つめる。
 ふと、水面に映る自分たちに気がついて写真に撮る。

 花の写真だから。深い意味はないから。
 自分に言い聞かせるが、いったん早まった鼓動はなかなか落ち着いてくれなかった。
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