激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「この形は世界でも珍しくて中国にもないんだよ。形の由来はいろんな説がある。胎児……生まれる前の赤ちゃんの形だとか、人間の内臓の形だとか。俺は魂の形かな、と思うよ」
「魂……」

「勾玉の『たま』は御霊(みたま)に通じるものなんじゃないかと思うんだ」
 その説明は紫緒には難しく、彼女は首を捻った。

「これは見えなくてもおばあさんがそばにいてくれる証拠だよ。だからあげる」
「だけど、そしたらあなたのおばあちゃんは?」

「俺の祖母は生きてるから」
 彼はにっこりと笑った。
 その笑顔に、不思議と紫緒の心は穏やかになっていく。

「日にかざしてみて」
 紫緒は水晶を日に掲げる。と、勾玉の中心が虹色に輝いた。

「虹だ!」
虹水晶(アイリスクォーツ)だよ。中にクラック――ひび割れがあって、光が反射してるんだ。でもひび割れのある水晶すべてに虹が見えるわけじゃない」
 紫緒には不思議で仕方がなかった。涙を忘れ、しげしげと水晶を見つめる。

「仕事があるから、俺は行くね。おばあさんはきっと君を守ってくれているから」
 彼はそう言って足早に去っていった。
 紫緒はその日、なんども水晶を取り出しては中の虹を眺めた。
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