激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
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「あとになって、申し訳なくて返しに行ったんです。でも巫女の方に、そんな神主はいないと言われてしまって」
紫緒が話す間、千暁は考えるように口に手を当てていたた。長い指が口元を覆う仕草が妙にセクシーで紫緒はどぎまぎした。
「……それ、私です」
恥ずかしそうに、千暁は言った。
「あのときの私はただの手伝いで、高校生でした。だから該当の神主はいないと言われたのでしょう」
「これ、珍しいものでしょう? 申し訳ないです」
「旅行先で見つけて、一目惚れで買ったんですよ」
「やっぱりお返ししないと。思い出の品ですね」
水晶を差し出した紫緒の手を、千暁はそっと包んで押し返す。
「あなたにお譲りしたものです」
「でも」
「あなたに持っていていただきたいのです。私が買ったのも、あなたにお渡しする運命の一端だったのでしょう」
運命の一言に、紫緒の胸が大きく跳ねた。
紫緒は千暁を見る。彼の笑みにいつもとは違う暖かさが宿っているように見える。
「……はい」
紫緒は頷いた。
千暁に包まれた手が、やけに熱く感じる。
青い空の中、雲が奇跡のように虹色に輝いていた。