激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない

***

 大使館の応接室で、ミカは不機嫌に正面の女を見た。
 どうしてこんな女と同席しなくてはならないのか。

 永高詠羅、いつぞやのどうでもいいパーティーの主催者の娘だ。
 そして、彼女は紫緒を虐げていたと知っている。

 ミカは日本に赴任してすぐ、興信所に依頼して紫緒を探していた。
 第一報で紫緒の写真は手に入れ、外見は把握していた。

 紫緒と再会した翌日に届いた報告書には、詠羅が紫緒を迫害していると記載されていた。
 その女が、持てる人脈のすべてを駆使して自分に接触してきた。
 値踏みする目が不愉快だった。

 自分を見る女性の中には、値踏みをしてくる者も少なくない。
 不遜な、とミカは苛立ちとともに見下した。

 自分に合う男性を探したい。その気持はわかる。
 だが、それは値踏みとイコールではないはずだ。
 それが紫緒を虐げた存在であるなら、なおのこと腹立たしい。

「今日はいいお話を持ってきたの」
 詠羅が邪気のある笑みを浮かべる。

「あなた、陸里紫緒が好きなんでしょう? 協力してあげる。そのかわり私にも協力して」

 ミカは嫌悪に目を細めた。
 詠羅はにたにたと笑い、空には雷雨を予感させる暗い雲がたちこめていた。
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