激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない



 パーティーの当日は、事前にシフトを休みにしてもらっていた。
 紫緒はドレスに着替えたあとに美容室に行き、メイクと髪を整えてもらった。

 いったん家に帰り、落ち着かない時間をすごす。バッグにちゃんと水晶を入れたかな、となんども確認した。
 そろそろ時間かな、という頃に、インターホンが鳴った。
 見ると、千暁が神主の装束のまま映っている。

「はい」
「千暁です。少しよろしいですか」
「はい」
 紫緒はミカからプレゼントされたバッグを持ってすぐに玄関に向かい、ミカから贈られた靴をはいて出る。

「ドレス、お似合いですね」
 見た瞬間、千暁が言う。
「ありがとうございます」
 お世辞とわかっていても、やはり胸は喜びにはずんだ。

「どうされました?」
 紫緒がたずねると、千暁は微笑した。いくぶんか、緊張しているように見える。

「左手を出していただけますか」
 紫緒は首をかしげて左手を差し出す。
 千暁はその手を取ると、なにかを薬指にはめた。
 紫緒は声をなくし、目を丸くして薬指を見て、千暁を見た。

 紫緒の指にはめられたのはグラデーションの色味のストーンがついた指輪だった。ピンクから青、緑と色が変化していて、虹のようだった。

「魔除けです。トルマリンですが、こういう多色のものはパーティーカラーというそうです」
 トルマリンに魔除けの意味はない。彼女に持たせるための言い訳だった。
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