激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「素敵ね」
「飾り立ててばかりで恥ずかしいよ」
 ミカは苦笑する。

「軍事政権時の名残。外国にバカにされたくないって見栄ばっかりはって、無駄なお金を使ってたと思うよ。壊すのもお金かかるからそのまんま」

 ミカは肩を竦めて見せた。自国だからこそ見えることがあるのだろう。
 ミカの少年時代を思い、紫緒の胸が切なく痛んだ。



 レセプションパーティーは滞りなく開催された。
 ミカが開会の辞を述べる姿には、心にくるものがあった。

 かつては愛くるしい少年だった。笑顔はきらきらと輝き、大人からもかわいがられた。
 おやつのプリンを半分こして食べ、お昼寝は二人で一枚のブランケットを使った。
 ミカは四つ上であるせいか、いつも自分を気遣ってくれていた。

 あの頃は、ミカが好き、と屈託なく言っていた。もうあんな無邪気に言うことなんてできそうにない。

 ミカは挨拶を述べたあとは客の対応に追われた。
 立食形式だったので、紫緒はお皿を手に料理を選ぶ。
 壁際に立っておいしい料理を堪能していたときだった。

「庶民がこんなところに来るなんて、驚きだわ」
 鋭い声に、紫緒はひきつった。
 そこにいたのは詠羅だった。

「どうしてここに」
 言ってから、彼女の会社のパーティーにミカがいたことを思い出す。
 ならば逆にここに詠羅がいてもおかしくないだろう。
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