激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「ついでだから言っておくわ。私、千暁さんと結婚することになったから」
 紫緒は顔をしかめた。

 縁談は断ったと聞いている。また話が持ち上がったのだろうか。
 だが家族は自分を本当の恋人だと思い込んでいる。その状態で縁談を受け入れるとは思えない。

「信じてないわね」
 ムッとして詠羅が言う。
「千暁さんからはなにも言われてませんから」
「生意気!」
 詠羅は手に持ったワイングラスを振り上げた。
 紫緒はとっさに腕で自分をかばう。

「なにするのよ!」
 怒る詠羅の声に目を向けると、渋面のミカが彼女の腕をつかんでいた。

「なぜお前がいる」
「招待状はあるわよ!」
「ミカ……」
「大丈夫だよ」
 ミカは紫緒に微笑して見せた。

「お嬢さん。こちらでは周りの方を驚かせてしまいます。あちらで話をお聞かせください」
 ミカの口調が急にやわらかくなり、詠羅の肩を抱く。
 詠羅は彼の笑顔に見とれた。

「いいわよ」
 機嫌よく答え、詠羅はミカに連れられて会場の外に出た。
 紫緒は不安になりながら二人を見送っていた。
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