激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 受付で招待状を渡して中に入ると、きらびやかなシャンデリアが目に入った。
 赤い絨毯が敷かれ、クラシックが会話の邪魔にならない程度に流れている。シャンパンを片手に談笑する人たちはみな華やかに着飾っていて、紫緒は思わず自分と比べてしまった。みんな、自分とは比べ物にならないくらい綺麗だった。

 怖気付いた紫緒に気付いた千暁は紫緒の耳に優しく囁く。
「大丈夫ですよ。紫緒さんは誰よりも素敵です」
 お世辞でもうれしくて、紫緒は顔を赤くした。

 千暁がそっと紫緒の背中を押す。
 紫緒は頷いて一緒に会場に入った。
「今日は令嬢にご挨拶をしたらミッション終了でしょうか?」
「たぶん……」
 紫緒は自信なく頷く。

「ご令嬢はどちらに?」
「えっと……」
 きょろきょろしていると、あ、と千暁が声を上げた。
 どうしたんだろう、と彼を見る。

「友人がいたんですよ」
 彼の目線の先には袴姿の男性がいた。20代後半のように見える。壁際に立ち、虚ろに空を見つめているようだった。髪はぼさっとしていて、目元を隠していた。

 視線に気づいたのか、彼は千暁に会釈をした。会釈を返す千暁の横で、なんとなく紫緒も頭を下げた。

「彼は雅楽の楽師なんです。こんなところに来るのは珍しいのですが」
 千暁の説明に、紫緒はただ頷いた。
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