激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「私のスマホ見てない? 鍵も」
「ごめん、スマホは僕が壊しちゃった。昨日、君のバッグを落としちゃって、中身を拾おうとしたときにうっかり踏んじゃってさ。弁償するね」
 おずおずと差し出されたそれは、液晶に大きなヒビが入っていた。電源はもう入らない。

「弁償はいいよ。服とかプレゼントされたし。でも服の方が高くない?」
 指輪を返したつもりの紫緒はそう言った。
 ミカはふふっと笑った。

『信じるんだ、こんな言い訳』
「なに?」
 紫緒が聞き返す。ミカはときどき母国語でつぶやくから困る。

「純粋でかわいい」
 ミカは上機嫌にそう言った。
 昼食後に帰ろうとした紫緒は、もう少し、とミカにひきとめられた。

「晩御飯を一緒に食べたら送るからさ」
「だけど」
「お願い。久しぶりで嬉しいから。それがお返しってことで」
 そこまで言われると、もう紫緒には反論できなかった。

***

 帰宅した千暁は装束を改めて神社に向かった。
 正面突破はならなかった。
 もとより、正攻法でどうにかなる相手ならこんな事態にはなっていない。
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