激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「やっぱりなんかあったよね?」
 律が静かに問う。
 千暁は様子を窺うように大晴を見る。
「……彼は大丈夫。ね?」
 律が言うと、大晴はふん、と鼻を鳴らした。

「怒らないで」
 律が彼の頭を撫でて、大晴はうるさそうにその手をはねのけた。
 まるで猫と犬がじゃれあっているかのようだ。

「いつの間に仲良くなったんだ」
 律にたずねる。
「仲良くってより、同士って感じ」
 大晴がぷいっと横を向く。

 これ以上は掘り下げないほうがいいような拒絶を感じて、千暁はため息と共に語った。
 紫緒が幼馴染の外交官に呼ばれてパーティーに行き、それ以降連絡がとれないことを。

「さっき大使館に行ったが、門前払いだった」
「警察には?」
「電話で確認した。が、事件性がないから動けない」

 彩陽のストーカーの件でお世話になった刑事に直接聞いた。予想していた回答だが、なにもできないのが歯がゆくてならない。

「拉致監禁じゃねーの? 役に立たねーな」
 大晴が毒づき、続ける。
「別口で行くしかないな。ラトメニアにはVRの公演で行ったことがある。そのときのコネを使ってみる」
「そんなことができるのですか」
 千暁は驚いた。
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