激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 型通りの慰めは通じなかった。
 旅先で買った虹水晶を渡して説明すると、驚きとともにまじまじと見る。その姿がかわいらしかった。

 彼女を救えたのか、当時の自分にはわからなかった。
 だが、彼には一つの指針になった。

 神に仕えるのは俗世間と切り離して生きることではない。
 思い悩む人を支えるために自分たちの仕事があるのだ。
 千暁はそう信じ、神主になる決意を固めたのだった。

***

 むにゃむにゃと目を覚ました紫緒は、昨日と変わらない風景に目を疑った。
 晩御飯を食べたら急に眠くなった。
 体調が万全じゃないんだろうね。
 ミカに言われ、強い眠気に勝てずに眠ってしまった。二晩も外泊しちゃうなんて、と紫緒は慌てた。

 サイドテーブルを見ると、ミカからの伝言が置いてあった。
『お昼にまた来る。神社には紫緒がやめるって連絡しておいた』
「は!?」
 紫緒は目を疑った。

 だが、何度見てもそれは同じ文言で変わりようがない。
 紫緒は周囲を見渡す。
 連絡手段は何もない。電話もインターネットも、ペンすらも。

 テーブルには新しい雑誌がいくつも置かれていた。マンガも小説もあった。
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