激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
ろくに紫緒が食べないのを見て、ミカはため息をついた。
「そんなに怒るなんて。ごめんね」
「どうしてこんなことしたの」
「方法が正しくないのは理解している」
「わかってるなら、帰して」
「それはできない。家の鍵は捨てたよ」
ミカはきっぱりと言い切り、続ける。
「ねえ、わかって。僕は君がすべてなんだ。君との再会だけを願って生きてきた。君だけが僕の希望」
ミカの憂えた顔に、紫緒はなにも言えなかった。
ミカは二度の政変を体験した。壮絶だっただろう。
彼の心のよすがになれたことは純粋に嬉しい。光栄でもある。
だが、だからといってなにをしてもいいわけじゃない。
「君はまだ誰のものでもないでしょう?」
紫緒は顔をひきつらせる。
どういう意味で言っているのか。
「必ず僕の色に染める。幸せにするから安心して僕の国に来て」
席を立ったミカが紫緒に近付く。
紫緒は思わず席を立ち、逃げようとした。
一歩早くミカは紫緒を捕まえ、抱きしめる。
「離して!」
「無理矢理なんて無粋なことはしないよ。だから逃げないで。だけど抱きしめるのだけは許して」
声には哀愁と寂寥がにじみ、紫緒は抵抗ができなくなった。
「政府専用機を用意させる。もちろん、普通は外交官のためには飛ばない。僕だからできるんだ。結婚したら密入国にはならないからね」
ミカは優しく囁く。