激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 マネージャーって大変そうだな、と紫緒はそれを見送った。

「あら、来たのね」
 高慢な声が響く。そちらを見ると豪華に着飾った詠羅がいた。ボディラインを強調する真っ赤なドレスに金色の造花があしらわれ、流れるように垂れた飾りが揺れる。髪にはビジューがたっぷり使われたアクセ。大ぶりのピアスはダイヤだろう、揺れるたびにきらきらと輝いた。

 隣には上質なスーツを着た斗真が立っている。深い紺色は落ち着きがあるが、詠羅に合わせたのだろうネクタイは赤地に金のラインが入っていて、悪目立ちしているように見えた。

「今日もちんけでみっともないわね」
 詠羅の嘲笑に、紫緒はうつむいた。
 詠羅のドレスに比べたら確かに安くてペラペラだ。

「髪型もダサくって、とてもお似合いだわ。トータルコーディネートはばっちりね」
 嫌味が胸に痛い。言い返すこともできない。
 いつもなら助けてくれる斗真はにやにやと笑うばかりだ。
 当然だろう、結局、彼は詠羅の側の人間だったのだ。

 婚約相手は斗真なのだろうか。
 恥をかかせるだけではなく、自分に見せ付けるために呼んだのだろうか。
 悔しさに、ぐっと奥歯を噛み締める。

「お一人? 噂の素敵な恋人はどちらかしら?」
 挑発にひるんだ紫緒の代わりに口を開いたのは千暁だった。

「初めまして。紫緒さんとお付き合いしております、天社千暁です」
 直後、詠羅はぽかんと口を開けて千暁を見た。まさかこのイケメンが彼女恋人だとは思いもしなかったのだ。
 千暁は穏やかな笑みをたたえて詠羅を見返す。
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