激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
GO OUT(出ていけ)!』
 彼が英語で再度言う。
 女は慌てて門へ向かった。

 一瞬笑ったように見えたが、気のせいだろう。
 やりとりを見ていた門の警備員は、さっと門を開けて女を通した。

 彼は大使に知られる前に不審者を追い払えたことにホッとして、違和感の追求はしなかった。

***

 やった! 出られた!
 紫緒は門から遠ざかったころで走り出した。
 充分に距離をとったところで足を止め、息を整える。

 ここからどうしよう。
 歩いていくしかないのか。
 住所は。
 そう思い、自販機を探した。
 ほどなくして見つけて自販機に書かれた住所を確認したが、高天神社からは遠い。

 道は続いているんだから。
 紫緒は自分を励まし、道路標識を参考に歩く。

 交番を見かけたが、夜間のためか無人だった。電話があったが、これを使っても警察につながるだけだと思ってあきらめた。警察になにをどう説明したらいいのかわからない。

 さらに、電話番号はすべてスマホの中で、誰の番号も覚えていない。
 せめて両親のスマホの番号だけでも覚えておくべきだった。後悔しても、遅かった。
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