激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 外国の硬貨やゴミを入れる人もいるという。外国の硬貨はやはり両替でマイナスになるし、ゴミなんて言語道断だ。

 お賽銭といえば、どこでもお金を置いて行く人に困っているとネットで見たことがある。狛犬の足元なんてかわいいほうだ。しめ縄に刺すといいなんてデマがとぶこともある。投げ入れOKじゃない池に投げる人もいる。回収が大変になるのに。柱のヒビに差し込む人なんて、神社を壊そうとしているとしか思えない。それらを避けるために賽銭箱を増設すると金の亡者と言われる。
 大変だな、と麻耶は同情していた。

 神社で騒いでゴミを置いていく人なんて、まるで貧乏神か疫病神のようだ。いや、そう言うと貧乏神と疫病神から一緒にするなとクレームがくるだろうか。

 ネットではSSR神主の専スレが立っていることに驚いた。新人巫女が彼の婚約者だという噂も出ていたが、その程度で動揺していてはファンがすたる。麻耶は彼が幸せならばいいというのが信条だった。

***

 紫緒は明け方まで歩き通した。
「着いた……」
 紫緒はぐったりと電柱に手をついた。
 途中の公園の水道で喉を潤し、なんとか歩いた。

 全身はくたびれて汗まみれだ。髪が額にも首にもはりついて気持ち悪い。
 家の鍵はない。離れは母屋と違って指紋認証ではないから入れない。

 早朝にインターホンを押すのは忍びないから、見つけてもらえるまで待とう。
 とにかく今はたどりついたことに安堵していた。
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