激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 あともう一息、と鳥居へと進む。
「――陸里さん?」
 声がして、紫緒は振り向いた。

 そこには絵麻と優奈の二人がいた。
 紫緒は回らない頭で考える。

 逃げるべきだ。

 そう思うのに、疲れた足がうまく動かない。いっきに疲労が襲って来ていた。

「ちょうどいいわ。捕まえて」
 優奈が言う。
 紫緒は逃げようとしてよろけ、転んだ。
 絵麻が紫緒の手をつかむ。

「ごめん、一緒に来て」
 抵抗するが、疲れた紫緒より絵麻の力のほうが強い。

「お願い、私を助けると思って」
 絵麻は懇願するように紫緒を見る。
 困惑する紫緒の視界に、黒縁眼鏡の女性が入った。

 千暁のファンだ、とすぐに気付いた。
 あの人がここに混ざるとややこしいことになるのでは。
 なにより絵麻が助けを求めている。
 紫緒は決断した。

「わかった、行く」
 紫緒が答えると、絵麻は泣きそうに顔を歪めた。
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