激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
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お参りを終えた麻耶は、鳥居の前で女性がもめているのを見た。
悪質なファンとして名高い女性と、巫女の女性が二人だった。
巻き込まれたくないな、と思っていたら彼女らが移動を始めてホッとした。
途中、新人巫女がなにかをぽろっと落とした。
彼女らは車に乗り、どこかへと走り去った。
麻耶はなんとなく彼女の落とし物を目で探した。
透明な勾玉が落ちていた。
手に取ると、中に虹色が見えて綺麗だった。
届けようにもまだ社務所は開いてないし、お参りは一日に一回と決めている。
「明日でいいかな」
そう思い、勾玉をジーンズのポケットに入れた。
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紫緒が連れていかれたのは古びたカラオケ店だった。
二十四時間営業で、店員はめんどくさそうに受付をした。フリードリンクつきのフリータイムだった。
絵麻が三人分のジュースをお盆に載せて運び、部屋に行く。
部屋に入った直後、お盆をテーブルに置いた絵麻に抑えられ、体の前側で手錠をはめられた。
「なにするの!」
がちゃがちゃと動かすが、はずれる様子はない。
「千暁と結婚するのは私だから。さっさとあの家を出て」
優奈が言う。絵麻は気まずそうに目を逸らした。
「拒否します」
普段の紫緒なら即答を避けて穏便にすませようとするはずだった。
だが今は、徹夜で歩いて疲れている。さらに不当に手錠をかけられ、無性に腹が立った。