激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない

***

 お参りを終えた麻耶は、鳥居の前で女性がもめているのを見た。
 悪質なファンとして名高い女性と、巫女の女性が二人だった。

 巻き込まれたくないな、と思っていたら彼女らが移動を始めてホッとした。
 途中、新人巫女がなにかをぽろっと落とした。
 彼女らは車に乗り、どこかへと走り去った。

 麻耶はなんとなく彼女の落とし物を目で探した。
 透明な勾玉が落ちていた。
 手に取ると、中に虹色が見えて綺麗だった。

 届けようにもまだ社務所は開いてないし、お参りは一日に一回と決めている。
「明日でいいかな」
 そう思い、勾玉をジーンズのポケットに入れた。

***

 紫緒が連れていかれたのは古びたカラオケ店だった。
 二十四時間営業で、店員はめんどくさそうに受付をした。フリードリンクつきのフリータイムだった。

 絵麻が三人分のジュースをお盆に載せて運び、部屋に行く。
 部屋に入った直後、お盆をテーブルに置いた絵麻に抑えられ、体の前側で手錠をはめられた。
「なにするの!」
 がちゃがちゃと動かすが、はずれる様子はない。

「千暁と結婚するのは私だから。さっさとあの家を出て」
 優奈が言う。絵麻は気まずそうに目を逸らした。

「拒否します」
 普段の紫緒なら即答を避けて穏便にすませようとするはずだった。

 だが今は、徹夜で歩いて疲れている。さらに不当に手錠をかけられ、無性に腹が立った。
< 197 / 241 >

この作品をシェア

pagetop