激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「だったら報いを受けてもらうわよ」
 にらまれて、紫緒はその目をしっかりと見返す。
 優奈は不快そうに顔をしかめた。

「私、オールで疲れたから家で寝てくる。あんたはここで見張ってなさいよ」
「……はい」
 絵麻は頷く。
 すぐにどうこうされるわけではないらしい、と紫緒はほっとした。

 あきらめずにチャンスを待つ。隙を見つけたら逃げる。
 紫緒は自分に必死に言い聞かせた。

 優奈が出て行き、絵麻と二人になると、紫緒は言った。
「絵麻さん、仕事は?」
「今日は休み」

「手錠、はずしてくれない?」
「……できない。ごめん」
 怯えたように彼女は言う。

「なら、いい」
 紫緒は立とうとしてふらついた。絵麻は慌ててそれを支える。
 しばらくは疲労で動けなさそうだ、と紫緒は悔しく座り込む。
 絵麻がジュースを飲ませてくれて、ようやく一息つけた。

「どうしてあの人と一緒に居るの?」
 絵麻は怯えたように目をそらす。
「助けてって言ったじゃない。話してくれないと助けようもないわ」
 絵麻は衝撃を受けたように目を丸くした。

「助けてくれる人なんて」
 その瞳にみるみるうちに涙があふれ、ぽろぽろと零れた。
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