激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
***
ミカはいらいらと捜索の結果を待った。
昨夜、帰宅した彼はすぐに異変に気が付いた。
紫緒が部屋にいない。
すぐに警備を呼んで激しく叱責し、警備員の半分を捜索に回した。が、行方は杳として知れない。
紫緒を逃がした警備員は報告しないまま彼女を探していたという。
彼はすでに侵入者に負ける失態を犯していたから、逃亡を知られたくなかったのだ。
結果、発覚が遅れた。
調査により、女が侵入者として追い出されていたことがわかった。それこそが紫緒だった。
『紫緒……どうして逃げるの』
ミカは歯噛みした。最初は両想いでなくても、すぐに紫緒を翻意させられると思っていた。
自分がいかに魅力的に見られるか知っている。いつも女性はすぐに落とせた。
つきあったりはしなかった。紫緒を口説くための練習にすぎないから。
自分のすべては紫緒のためにある。紫緒以外の女性で自分を汚したくなかった。
かわいい紫緒はかつて、慣れない日本での癒しだった。
祖国に帰っても彼女が癒しであることは変わらなかった。
連絡先は知っていたが連絡できなかった。スパイ容疑を恐れた両親に止められたのだ。
父は貿易会社の社長だから常にスパイを疑われ、監視され続けた。行動は制約され、ミカは友人すら自由に作れなかった。