激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「まだ事件とは決まっていないから得策ではない。彼女自身の評判にも関わる」
 千暁にはそれ以上を頼むことができなかった。

 こんなにも自分は無力なのか。
 うちひしがれそうになる自分を、千暁は叱咤する。
 落ち込むのはまだ早い。まだ今じゃない。

「車の進行方向の防犯カメラを探しましょう」
「もう嫌だ」
 大晴は拒否した。

「位置情報共有アプリは? 恋人なら入れてるでしょ」
「入れてませんよ」
 千暁は即答した。

「なんで入れてないの。今時の人なら入れてるんじゃないの。そもそもスマホは?」
「なんど連絡を入れても通じません」
「彼女はスマホを持ってない。僕が壊した」
 バツが悪そうにミカが言う。

 ああ、もう! と大晴がわめく。
「だったら! さっきの犯人に位置情報共有アプリを入れさせて!」
「無茶をおっしゃいますね」
 答えながら、一時期、神社のSNSに彼女がコメントをつけまくっていたことを思い出す。

「SNSはどうでしょう」
「……アカウントはわかる?」
 千暁が神社のSNSから彼女のSNSに行き、URLを送り、共有する。

「おっけ。だいたいこういうやつは承認欲求強めだからしょっちゅうアップして手掛かり残してるよ」
 大晴が言う。
 探すまでもなく、全員がそれを見つけた。
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