激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 泣き止んだ絵麻は、涙を拭って、ぽつりぽつりと話し始めた。
「私、高校のとき、あの人のグループにいじめられてたの」
 その一言でまた涙ぐむ。

「それで、就職はうちから遠いあの市にしたの。巫女は昔から憧れだったし、高天神社で働けて嬉しかった。だけど」
 言い淀み、口をつぐむ。

 紫緒は黙って続きを待った。
 寝不足のせいで頭が痛いが、幸か不幸か眠気はなかった。

「最近、優奈が現れて。私に気付いて権宮司と会わせろって命令してきて。言うこと聞かないと画像をばらまくぞ、って。体育の授業のあとで着替えてるときに、下着姿を撮られたの。それ以来、逆らえなくて」
 紫緒は怒りに震えた。
 なんという卑劣さだろう。

「誰にも言えなくて。言ったら画像をネットにあげられる。先生もクラスメイトも気付いてたのに誰も助けてくれなくて」
 絵麻は涙をこぼす。

「権宮司のこと、できる限り断ってたの。お金を渡したら帰るから。お金がないときは少しだけ話してた。あきらめさせたくて権宮司に恋人がいるって言ったら怒ってた。突撃はしないようにかわしてたけど無駄だった。なにかと呼び出されるし、タクシー代わりにされるし、今朝だって家まで送れって呼び出されて、気まぐれに神社に寄らされて。もう限界……もう嫌だ」
 優奈はまたしくしくと泣き始める。
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