激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「話してくれてありがとう」
 紫緒は言う。

「そういうことなら、警察に行った方がいいわ」
「だけど、画像を撒かれるかも」

「そうしていたら脅される一方よ。勇気を出して」
「嫌、怖い」

 絵麻は涙を零す。
 彼女の背を撫でると、彼女はまた嗚咽をもらした。




 蹴られて、紫緒は目を覚ました。
「なに寝てるのよ、図太いわね」
 ぼんやりとした映像が焦点を結び、紫緒はハッとした。

 腕には相変わらずの手錠がある。
 絵麻を慰めている途中、いつの間にか眠っていた。
 喉がかわいて、ひりつく。絵麻から少しジュースをもらったきりだ。

「あんたにふさわしい行き先を用意してあげたから」
 優奈が言う。
 顔をあげると、彼女の隣には四人の見知らぬ男がいた。優奈よりやや年上のようだ。

「どうするの?」
 絵麻が不安に声を上げる。
「女の利用価値って言ったらあれだよな」
 男たちがにやにや笑い、優奈は邪気のある笑顔になった。

 紫緒は優奈をにらんだ。
 同じ女性なのに、女性を平然と貶める。いや、それ以前に、他人を人として見ていない。

 許せない。だが自分は囚われの身でなにもできない。
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