激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「絵麻さん、警察に連絡して」
 紫緒が言う。声はかすれていた。
 全員の視線が絵麻に向かう。彼女は驚きと恐怖で目を見開いた。

「そんなことしたらどうなるかわかってるわよね」
「脅すのは犯罪よ」
 言った紫緒を、優奈が蹴飛ばす。

「黙ってなさいよ、ブス」
「絵麻さん、勇気を出して。自分を助けてあげて! 自分を苦しめないで!」

「うるさい!」
 優奈はさらに紫緒を蹴る。

「蹴るな。商品に傷がつくだろ」
 男が言い、優奈は足を止めた。
竜介(りゅうすけ)さん、こいつ、めちゃめちゃにしてよ!」
 優奈の声に媚があった。優奈より格上、ボス格なのか、と紫緒は思った。

「焦るなって。まずは移動するぞ」
 竜介と呼ばれた男はにやにやと笑った。
「行かないから!」
 紫緒はきっと男を睨む。

「だったらこの女に代わりに行ってもらうわ」
 優奈が絵麻を指さす。
 紫緒と絵麻の顔がひきつった。

「わかった? 私は命令する側、あんたたちは命令を聞く側。それは一生変わらないのよ」
 優奈の哄笑が、紫緒の耳に苦く響いた。
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