激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない

***

 千暁たちが外に出たときには、車が駐車場から出るところだった。
 千暁は素早くヘルメットをかぶり、バイクにまたがる。
「追うぞ」
 ミカが言い、律と大晴が続いた。

***

 体に力が入らない。
 紫緒は焦った。
 せっかく千暁たちが助けに来てくれたのに。
 自分がもっと動ければあのとき逃げ出せたのだろうに。
 おめおめと車に連れ込まれてしまった。

「こいつ、ぐったりしてません?」
 男の一人が竜介に聞く。
「ほっとけ」
 竜介が言う。

「あいつら追ってきました」
 ドライバーが言い、竜介は振り向いた。
 神主装束の男が乗ったバイクと、カラオケ店にあったクラシカルな黒い車が見えた。

「ふりきれ」
 命令されたドライバーはアクセルを踏み、車は急加速した。
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