激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
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ミカは加速する車とそれを追う千暁のバイクに目を細めた。
馬力はこちらのほうがある。だが、こまわりはきかない。
バンは右折車線を直進して直進レーンに割り込んで戻った。清流のようになめらかに走るバイクがそれを追う。
「つかまれ」
ミカはアクセルを踏み込む。バンと同じように右折レーンを直進する。右折待ちの対向車ぎりぎりをすりぬけ、直進レーンに戻る。後続のクラクションを無視してさらに加速する。
「事故る!」
大晴が文句を言う。
律は黙って体を支えている。その顔色は青い。
バンとバイクが黄色信号を突破すると、ミカは赤信号でもつっこみ、ほかの車を急停止させていた。
「危ないだろ!」
「紫緒のほうが大事だ」
ミカは断言し、バンを追った。
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バンは古びた倉庫に逃げ込んだ。
追って来たバイクと黒塗りの車をミラーで確認し、ドライバーは言う。
「あいつら、ついてきましたよ」
仲間の声に、竜介はふんと鼻を鳴らした。
「思い知らせるにはちょうどいいだろ」
この倉庫はすでに使われていない。業者が夜逃げして管理者がおらず、彼らのたまり場となっていた。
ここにはほかにも仲間が待機していて、すでに連絡してある。
あいつらに勝ち目はない。
竜介は確信していた。