激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない

***

 竜介が助手席から離れた直後、紫緒は車から逃げ出そうとした。
 だが、足に力が入らない。足どころか、全身に力が入らない。

 どうして。
 紫緒はすぐにその理由に思い至る。
 ろくに水分をとっていない。脱水しているのだ。

 こんなときに。
 紫緒は自分を叱咤する。
 どうか動いて。動け。

 後部座席のドアが、妙に遠く感じられた。
 必死に手を伸ばし、ドアの取っ手を掴む。
 力が入らず、ドアは一向に開けられなかった。

***

「動くな! 動くと撃つぞ!」
 竜介は銃を構え、叫んだ。
 最後の一人を倒し、千暁は顔を向けた。
 竜介が銃を向けているのが見えた。

 薄暗い倉庫の中でも怒りに紅潮しているのがわかった。
「次から次へと」
 ミカは大袈裟に肩を竦めて見せた。

「黙れ!」
 竜介が威嚇で発砲し、銃声と壁に着弾する音が響いた。ミカはまた肩を竦めた。
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