激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 次の瞬間、つかつかと歩み寄ってくる。
「紫緒!」
 彼は叫んでがばっと紫緒に抱き着いた。

「久しぶり、会いたかった!」
「え、どちらさま!?」
 紫緒はうろたえるが、感極まったような彼は手をほどいてくれない。紫緒の髪に顔を埋めるようにしてきつく抱きしめる。

「く、苦し……」
「手を離してください」
 千暁の咎める声に、ようやく彼は顔をあげた。

「紫緒、コイツ誰?」
「すみません、人違いなのでは」
 紫緒は質問で返した。

「昔、隣に住んでたミカ。ミカロユス・ミオシュだよ」
「……ミカちゃん!?」
「そう!」
 金髪の青年は緑の目に喜びを浮かべた。

 ミカは一年ほど紫緒の家の隣に住んでいた。紫緒が七歳のときに出会い、そのとき彼は十一歳だった。歳がそれほど離れているのに、ミカは嫌がらずによくミカと遊んでくれていた。

「国に帰ったあとも君のことは一瞬たりとも忘れなかったよ」
 ミカはそう言ってまた紫緒を抱きしめる。
「また会えるなんて。幸せ」
 うっとりとミカは言う。

 紫緒は慌てて引き離そうとするが、ミカは離してくれない。
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