激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 千暁は表情を変えない。冷静に刀を腰に構える。居合の構えだ。
「やめてったら!」
「彼を信じて。集中を乱さないで」
 律が言う。

「男の覚悟を邪魔するな」
 大晴が言う。
「なんでよ……なんでそんなに時代錯誤なの」

「時代錯誤でかまいません」
 千暁が口を開く。
「あなたを守れるなら、この命も惜しくない」
「いい覚悟だ。後悔するといいよ」
 ミカは目を細めて千暁に言う。

「後悔などしません。愛しい人のために命を賭けずに、いつ賭けるんですか」

 紫緒はがくりと膝をつく。
 千暁の覚悟にもう何も言えなくなった。

 彼が男の覚悟を決めたなら、私は女の覚悟を決めなければならないのだろうか。
 こうなっているのは、自分が原因だ。結果がどうなるとしても、目を閉じてはいけない。見届けなければならない。

「まず一発、天井へ向けて撃つ。それで弾丸の速度は見極められるよね。勝負は二発目だ。君の後ろの壁に向かって撃つ。斬れば君の勝ち、斬れなければ僕の勝ち」
「いいでしょう」

 ミカは千暁から距離をとった。
 三十メートルほど離れ、銃を天井に向ける。
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