激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 紫緒の目にはなにがどうなったのか、わからなかった。

 銃声と同時に千暁は刀を閃かせていた。
 千暁は抜いた刀を鞘に収め、姿勢を戻した。

 ミカは険しい顔で銃を構えていた手を下ろす。
 律と大晴が千暁の後ろにある壁を確認した。

「弾痕が二つある!」
 律が声を上げた。
「本当に斬るとは」
 ミカは唇をゆがめた。

 斬られた瞬間など見えはしない。が、感覚で斬られたことはわかった。そのうえ、弾痕という証拠がある。

 千暁はなにも言わず、ただ汗を拭った。
 直後、二人は再び緊張を漂わせる。
 千暁は再び刀を構え、ミカは銃を構える。

「どうして!?」
 紫緒が声を上げた直後。
 ミカが発砲し、千暁は刀を抜いて斬りつける。

 ミカの撃った銃弾は千暁の後ろにいた男の頬をかすめ、壁に着弾した。
 千暁が抜いた刀はミカの横の物陰にいた男の首に寸止めされていた。

 千暁とミカを襲おうとした男たちは、その場にへなへなと崩れ落ちる。

 そういうことか。
 紫緒もまた崩れ落ちた。安堵し、すべての力が抜けた。
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