激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 視界がぼやけ、意識が朦朧とし始める。
 その耳に、緊急車両の音が聞こえた。
「紫緒さん!」
「紫緒!」
 千暁とミカの声が、どこか遠くから響いた。



 目を開けた紫緒は、ぼんやりと天井を見た。
 それで自分が眠りから目覚めたのだと気が付いた。
 白い天井に、周囲を仕切る白いカーテンが見えた。

「良かった」
 低い声にそちらを向くと、千暁がいた。彼は安堵と喜びがないまぜとなったように目を細めていた。
 後ろには律と大晴がいる。
 そうだ、自分は捕まっていて、彼らが助けに来てくれた。

「あなたは脱水症状で倒れて病院に運ばれました」
 腕を見ると、点滴の管が刺さっている。ぽたり、ぽたり、とゆったりと雫が垂れていた。

「倉庫に着いてすぐ、律が救急車と警察を呼んでいたそうです。なのですぐにあなたを搬送できました」
 千暁の言葉に、紫緒は黙って頷いた。

「男達は警察に逮捕されました。あなたを拉致した女性もじきに捕まるでしょう。彼女があなたを襲った件も捜査が終了し、二つの事件の犯人として送検される見込みだそうです」
「絵麻さんは……被害者です」

「彼女は加害者でもあり、自ら警察に出頭しました。ですが、もし送検されても不起訴か起訴猶予でしょう」
 それを喜んでいいのかわからなかった。
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