激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 気になるのはそれだけではない。
 千暁たちは自分を助けるために男たちと戦い、倒してしまった。

 過剰防衛にならないだろうか。千暁は古武術を嗜んでいて、そういう人は不利になると聞いたのだが。

「私達も警察からお叱りを受けましたよ」
「大丈夫ですか?」
「相手は銃も含めて武器をもった多人数、正当防衛が認められそうです」

 日本刀を許可なく持ち歩いたことは銃刀法違反だが、ミカは警察が来る前に車にそれを載せた。外交官の車は移動する治外法権、外交官自身が歩く治外法権だ。警察は介入できず、追及を免れることができた。

「ミカは」
「外務大臣との会談があるとのことで、帰りました」

 外交官がからんだ今回の事件に、警察は及び腰だ。強国ではなくても外交官、しかも相手国の政情は不安定。なにが火種になるかわからない以上、慎重にならざるを得ない。まさか日本女性の誘拐事件のせいでラトメニアに飛び火して、それを日本のせいにされてはかなわない。

「結局、あいつは外交官なんだ? お前のなんなんだ?」
 確認するように、大晴が聞く。

「幼馴染で……」
 どこまで説明したらいいのだろう。巻き込んだからには全部言うべきだろうか。

「まだオレ、全容を知らないんだけど」
 大晴が口をとがらせる。
「知らないのに助けに来てくれたのね。ありがとう」
 紫緒が言うと、大晴は、うぐ、と口をつぐんだ。
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