激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「このあと予定は? 話したいことがたくさんあるんだ」
「ミカちゃん、待って」
「彼女を離してください」
 千暁が強い口調で言い、ミカはムッとして千暁を見た。

「感動の再会に水を差すとか、そういうの日本では無粋と言うんだろう?」
「日本文化にお詳しいようですね、ではハグは日本では一般的ではないとご存じでは? 離れてください」
「嫌だ」
 ミカは紫緒を抱きしめて離そうとしない。

「お願い、ミカちゃん」
 紫緒がお願いすると、ミカはしぶしぶ体を離した。

「コイツ、キミのなに?」
「私は恋人ですよ」
「恋人?」
 ミカはあからさまに不機嫌な声を出し、胡乱な目を千暁に向けた。

「本当ですよ」
 千暁が紫緒の後ろから抱きしめて来る。紫緒は硬直して顔を赤くした。
「離れろよ。日本ではそういうのは一般的じゃないんだろ」
 千暁は体を離したが、肩に置いた手は離さなかったし、体の片側は千暁に密着したままだった。

 初めてのことに、紫緒の胸は鼓動を早くするばかりだった。
 だから、ミカが相変わらず不機嫌そうなことに気が付く余裕などなかった。
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