激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
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高天神社の夏祭りには多くの人々が訪れた。
家族連れが多く、カップルや友達連れもいる。
屋台も多く並び、盛況だった。
警備のために、祭りの本部には警察官が待機している。
一人、暗い顔をした女が歩いていた。その目は憎悪に燃えている。
神社への寄付をやめると宣言したあと会社の取引が急にうまくいかなくなり、詠羅の父はそちらが忙しくて彼女に構う暇がなくなっていた。
最初にラトメニアの会社が小麦の取引をやめると通達してきた。そこからなし崩しに悪評が広まって取引を次々と停止された。
社内では神罰だとか、今までの横暴さの因果応報だとか噂がまわり、退職者が続出していた。
罰を受けるべきはあの女なのに。
詠羅はイライラと神社の拝殿を睨む。
周囲を確認し、中に入り込む。
御神体とされている丸い鏡を覗くと、邪悪な笑みを浮かべた女がいて、はっとする。
が、振り向いても誰もいない。
なによこの鏡。歪んで映るんじゃない。
詠羅は口をとがらせ、再度、鏡に手を伸ばす。
これを壊して、あいつのせいにしてやる。
鏡には、詠羅の歪んだ笑みが大きく映っていた。