激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 会場のホテルを出た紫緒は大きく伸びをした。
 昼間のパーティーだったからまだ空は青く、人々が行き交っている。
「ああ、疲れた!」
 解放感で、心は晴れやかだった。

「お疲れ様」
 笑うような声に、紫緒は千暁に頭を下げた。

「今日は本当にありがとうございました」
「お役に立てたようでよかったです」
「良かったらお茶でもごちそうします。いえ、お礼にごちそうさせてください!」
「喜んで」

 相変わらずの穏やかな笑みに、紫緒はほっとする。
 ふと、その笑顔をどこかで見たことがあるような気がした。
 が、思い出すより先に空に輝く七色を見つけて、そちらに意識が向く。

「虹! でもへこんでる!?」
 千暁が紫緒の目を追い、空を見上げる。
 普通は上に向かって弧を描く虹が、下側に弧を描いていた。

「あれは環天頂アークですね」
「虹じゃないんですか?」
 言いながら、スマホを取り出して撮影した。

「逆さ虹とも呼ばれています。虹は水滴が太陽光を反射しているので必ず太陽の反対側に出ます。環天頂アークは大気中の氷を反射しているもので、太陽の上にできるんですよ。日の出の二時間後や日の入りの二時間前が見やすいそうですよ」

「知りませんでした。あ、そういえば私、虹を持ってるんですよ」
 首をかしげる千暁に、紫緒はバッグをあさり、取り出す。
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