激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 天は自ら助くる者を助く。
 祖母がよく言っていた言葉が頭をよぎる。
 努力さえすれば神様が助けてくれるのだろうか。
 が、今回に関しては自助努力でどうにかなるとは思えない。そもそもこれは人に日頃の努力を促すための言葉だろうから。

 紫緒はバッグに入れていたお守りの水晶を取り出した。水晶は勾玉の形をしていた。その中には虹がある。とはいってもアーチの形をしていはいない。光の屈折で虹が閉じ込められているように見えるのだ。

 おばあちゃん、私を見守っていてね。
 水晶を手に包み、祈る。

 困ったときはいつもこのお守りに祈って来た。祈ってどうにかなることではないが、それだけで少しは気持ちが落ち着いた。

 これをくれた人なら、今回のことはどうアドバイスしてくれるだろう。
 何度目かわからないため息をついたときだった。

 きゃっきゃと弾むような声が聞こえて来た。
 外国人らしき三人の一家が手水舎にいた。

 この神社は国宝級とも言われているので、外国からの観光客もしばしば訪れる。
 父親と母親が水盤の中に手をつっこんだので、紫緒は目を丸くした。

 手を洗った彼らはぶらぶらと手を振って水けを飛ばしている。
 子供はひしゃくで水をすくってはぶん投げるように撒いて遊んだ。

 唖然として見ていると、彼らはそのままこちらの拝殿へ向かった。

 きっと作法を知らないんだな、とは思ったが、あまりのことに唖然としてしまった。
 自分だって正しい作法を熟知しているわけではないが、彼らの行動はあまりに大胆に思えた。
< 3 / 241 >

この作品をシェア

pagetop